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和文論文56



エコーリス改良前後での結石破砕の治療成績の比較

青山病院泌尿器科

木村明,内田健三,加藤温,上谷恭一郎

緒言

 当院には,1992年8月に東芝製の体外衝撃波腎尿管砕石機が導入され,同月13日から体外衝撃波腎尿管砕石術(ESWL)を開始した.
 その後,1994年7月までに202人に対し,計579回の治療を行ってきた.
東芝製の体外衝撃波腎尿管砕石機の最大の特徴は誤照射防止機能である.これは,圧電素子よりまず弱い超音波を発射し,焦点領域に結石に相当する強反射体があるかを確認してから衝撃波を発射するものである(エコートリガーモード,ETM).
 この装置に,2度改良が施行された.
 まず,1993年4月,胆石にも応用できるよう,治療台を入れ替え,患者の下方からも衝撃波を照射できるようにした.この際,誤照射防止機能にも変更が加えられた.最初の設計では,焦点領域に結石があると判断する基準として,完全反射体を置いた場合の3%以上の反射がある場合としていた.これは,東芝工場でのモデル実験に基づいて決められた値とのことであるが,ETMを使用するには,3%以上の反射がなければならなかった.それが,このときの変更で,術者の判断で幾らでも域値を低くできるようになった.
 1994年4月,破砕効率を向上させるためのパワーアップがなされた.これは,音源から出力される高周波成分を破砕エネルギーに変換できるように改良したもので,音場,ピーク圧は従来のままで破砕効率を上げようというものである.
 この2つの改良により,治療成績が向上したか,集計した.

対象及び方法

 1992年8月から1993年3月までを第1期,1993年4月から1994年3月までを第2期,1994年4月から7月までを第3期とした.
 2つの時期にまたがって治療を受けた30名は,今回の検討から除外した.
 第1期中のみに治療を受けた者は30名(第1群),第2期中のみに治療を受けた者は30名(第2群),第3期中のみに治療を受けた者は30名(第3群)であった.
 第1群と第2,3群とで,ETMで治療された症例数の比率を比較した.
 第1,2群と第3群とで,破砕効率を比較した.ただし,第3期は4ヶ月と短く1994年7月現在では治療継続中のものの比率が他群に比べ高く,単純な比較はできないと考え,両群から,結石の位置,大きさをマッチさせた,16例を選び,治療回数,砕石に必要だった合計ショット数を比較した.また,装置のパワーをフルに使用する必要があったかどうかも比較するため,パワー目盛り(1から8レベルまで)をどのレベルまで上げる必要があったかについても比較した.

結果

 1回目の装置改良でETMの使用頻度が増加したかどうかを,第1群と第2,3群とで比較した.
第1群30例中,ETMが使用されたのが16例だったのに対し,第2群では,30例中18例(70%),第3群では,30例中18例(70%)であった.
第3期の4ヶ月間に砕石が完了した症例は16例で,腎結石が7例,尿管結石が9例であった.これらの症例(改良後群)の結石の大きさは,4*4mmから13*18mmであった.
 第1期,第2期より結石の位置大きさがこれらに相当する12例(改良前群)を,抽出した.
 治療回数は,改良前群が平均2.5回に対し,改良後群では平均2.7回であった.
 合計ショット数は,改良前群が平均4500発に対し,改良後群は平均3800発であった.
 砕石中のパワー目盛りは,改良前群が平均6.5であったのに対し,改良後群は5.6であった.

考察

 体外衝撃波腎尿管砕石機には,大きく分けて,水中放電方式(図1),電磁振動方式(図2),圧電式(図3)の3種類があり,当院に導入された東芝製の体外衝撃波腎尿管砕石機は,圧電式である.
圧電式の利点は,
1.焦点領域が小さいため,疼痛が軽度で,無麻酔で治療できる.
2.焦点領域が小さいため,結石は周辺より細かく破砕され,砕石片が尿管に嵌頓しにくい.
 一方,欠点としては
3.破砕力が弱く比較的大きな石では複数回の治療を要する.
と,従来から指摘されている.
 この弱点を補うため,1994年4月,当院の装置に,音源から出力される高周波成分を破砕エネルギーに変換できるような改良が加えられ,音場,ピーク圧は従来のままで破砕効率を上げる試みがなされた.
 合計ショット数が平均4500発から,改良後平均3800発に減少した点は,評価しうるが,これが治療回数の減少に結び付いていないのは,残念であった.
 ただし,パワーアップに伴い,パワー目盛りを最大まで上げない症例も増加していた.これは疼痛が制約となっているためで,術前の鎮痛剤の投与法を再検討し,パワー目盛りを8レベルまで上げられるようにすれば,治療成績がもっと向上するものと予想される.
当院に導入された東芝製の体外衝撃波腎尿管砕石機は,もう1つの利点として,誤照射防止装置(ETM)を内臓しており,結石が焦点領域にないときには,衝撃波を発射しないようになっている.この機能は,砕石の効率向上や合併症の軽減に役立つはずであるが,当初は,焦点領域に結石があると判断する基準として,完全反射体を置いた場合の3%以上の反射がある場合となっていたため,ETMを使用するには,3%以上の反射がなければならなかった.このため,ETMが使用できたのは,第1群では40%に過ぎなかった.それが,1993年4月の変更で,術者の判断で幾らでもETMを使用するための域値を低くできるようになった.その結果,第2群では70%,第3群では70%にETMを使用することができた.このことも,パワーアップ同様に,治療成績にも良い結果をもたらしていると思われるが,実際の判定には,さらに多くの症例の蓄積が必要であろう.