木村泌尿器皮膚科

名医の相談室.週刊現代,2月22日号,2014.

●相談者の悩み(ここをタップ。)

排尿後、下腹部が痛みました。

最近、トイレに行った後、下腹部に痛みを感じます。 おしっこができっていない不快感もあり、 頻尿気味で落ち着きません。

●回答者

木村明(きむら・あきら)
木村泌尿器皮膚科院長

●回答

トイレの後に下腹部にツーンとした痛みがあり、残尿感があって頻尿気味ということですと、『膀胱炎』の可能性が高いでしょう。なかでも頻繁に見られるのが、膀胱が細菌によって炎症を起こす「細菌性膀胱炎」です。その他にも「過活動膀胱」、さらに「間質性膀胱炎」も考えられます。


●相談者の悩み

排尿後、下腹部が痛みました

最近、トイレに行った後、下腹部に痛みを感じます。 おしっこができっていない不快感もあり、 頻尿気味で落ち着きません。

数日前、外の仕事でトイレを我慢したのですが、 そのせいで膀胱炎になってしまったのでしょうか。 どんな薬や治療法がありますか。

(神奈川県・28歳・女性)

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●回答者

木村明(きむら・あきら)
木村泌尿器皮膚科院長

’53年広島県生まれ。
’78年東京大学医学部卒業。
’90年東京都職員共済組合青山病院泌尿器科医長。
’94年東京大学医学部附属病院分院泌尿器科講師、病棟医長。
’96年東京共済病院泌尿器科部長。
’05年より現職

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●回答

トイレの後に下腹部にツーンとした痛みがあり、残尿感があって頻尿気味ということですと、『膀胱炎』の可能性が高いでしょう。なかでも頻繁に見られるのが、膀胱が細菌によって炎症を起こす「細菌性膀胱炎」です。その他にも「過活動膀胱」、さらに「間質性膀胱炎」も考えられます。

膀胱炎は女性のほうに多く見られます。女性は男性に比べ、尿道の出口が細菌の多い肛門や膣に近いので、細菌性膀胱炎にかかりやすいのです。

排尿を我慢すると膀胱炎になりやすいのは、排尿が膀胱や尿道から細菌を流し出す役目を持っているため。また精神的なストレスや冷えなどで抵抗力が弱っていると、膀胱炎になりやすくなります。予防としては、尿道から細菌が入らないよう清潔を保つこと。水分をしっかり摂って定期的に排尿すること。抵抗力を低下させない体調管理も大切です。

 症状が現れたら、泌尿器科を受診して下さい。まずは尿検査を行い、細菌を確認できれば数分ほどで膀胱炎かの診断がつきます。より詳しく細菌の種類を確定する「細菌培養同定検査」や、どんな薬剤が効果的か調べる「薬剤感受性検査」を行う場合は、結果が出るまで数日かかることがあります。

細菌性膀胱炎は、基本的には抗生物質を服用すれば治療できます。ただ、急性症状が治まっても、症状が慢性化していることがあります。それを確認するために、最初の検査後1週間ほどで来院してもらいます。もし、検査の結果、一般的な抗生物質が効かない薬剤耐性菌による膀胱炎だと分かれば、薬を変えないといけません。妊娠中・授乳中の人は、抗生物質の種類が限られ、他のものより効果が低いものを使うことになります(ペニシリンやセフェム系)。

間質性膀胱炎は少々やっかいです。膀胱は、外側の筋肉と、その内側の尿に接する粘膜、さらに筋肉と粘膜の間にある「間質」と呼ばれる部分でできています。間質性膀胱炎とは、この間質が炎症を起こして膀胱が伸びにくくなる病気です。排尿痛などの症状は細菌性膀胱炎に似ていますが、細菌の感染でないため、抗生物質は効きません。

 間質性膀胱炎の原因はよくわかっておらず、予防法も治療薬も確かなものはありません。治療には、膀胱の中に生理食塩液を注入し、膀胱を強制的に拡張する「水圧拡張術」が必要です。

 過活動膀胱は、膀胱の尿を溜める役目(拡張)と尿を出す役目(縮小)が狂う病気です。尿が溜まると過敏に収縮してしまい、急に尿意を催して、漏らしてしまうのです。抗コリン剤を服用し生活を改めれば、症状は改善します。

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