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和文論文20



コンピューターグラフィックスによる腎の三次元表示

東芝中央病院泌尿器科
木村明

目的:最近コンピューターグラフィックスを用いた臓器の三次元表示の試みが、形成外科、脳外科領域などで行われている。我々は同手法を用いて腎の三次元表示を行い、臨床的な意義につき検討した。
          対象及び方法:馬蹄鉄腎症例1例、腎細胞癌症例3例で、術前のX線CT画像を光ディスクに記録した。これを介して画像を当院画像センターのミニコンVAX11/750に転送し、医師がCRT上で各スライスごと(1cm間隔)に、腎、肋骨、体表をトレースすることにより、輪郭を入力した。表示法は、体表については、一定間隔で記憶した輪郭のポイントを上下左右に結んでメッシュ状に表示するワイヤフレーム法を、腎と肋骨については、このメッシュが構成する面と光源との角度に応じた輝度でこの面を塗りつぶすサーフェース法を用いた。
結果:馬蹄鉄腎症例では、両腎の融合の程度や腎門部が前方を向いており回転異常を伴っていることが明瞭に示された。腎細胞癌症例3例では、腎と肋骨の位置関係が明瞭に示され、特に側方から眺めた場合、肋骨が妨げになるかどうか、どの肋骨を切除すればよいかといったことが表示しえた。
考察:馬蹄鉄腎症例の表示の結果、三次元表示すると、空間的な広がりを把握しやすくなるものの、診断のための情報はすべて基になったCT像に含まれており、、この表示が診断を容易にするとは思えず、患者及び家族への疾患の説明程度にしか役立たないとの印象をえた。しかし、腎細胞癌症例での、腎と肋骨と体表の同時表示は、腎上極と肋骨との位置関係を任意の方向から眺めることができ、腎摘出術の到達法決定に役立つのではないかと思われた。今回は医師がミニコン操作に不慣れなこともあって、輪郭入力に数時間を要し、実際の手術に役立たせることができなかったが、装置及びプログラムの改良により、輪郭入力を30分程度に短縮できる見込みである。