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木村明:からだと心 健康相談 Q&A
すこやかファミリー6月号,30,2009.

健康相談 Q&A


Q.尿道カルンクラと診断。経過観察中だが放置してよいか

65歳女性。41歳のとき、子宮脱の手術を開腹せずに行い、その半年後「カルンクラ」と診断されました。治療はせず経過観察となり、将来的に手術をしてもよいといわれ現在に至ります。表面は血豆のようですが、放置していてよいのでしょうか? どうなれば手術することになるのでしょうか?
(神奈川県 N)

A.がん化する心配もなく、生活に不便が生じたら手術すればよい

「尿道カルンクラ」は、尿道の出口の後ろ側にできる暗赤色の腫瘍です。皮下の血管が膨らんでいるもので、尿道の細胞ががん化した尿道がんとはまったく異なるものです。将来がん化する心配もありません。ですから、あわてて手術する必要のない病気です。
出血を繰り返すようになったり、尿線が2つにわかれて飛ぶようになったりして、生活に不便を感じたら切除手術を行います。
 奥はどこまでつづいているのか、膀胱近くまで切り取るのか、といったことを心配する患者さんもいますが、どこまでつづいているのか、という質問に正確に答えることはできません。カルンクラと正常尿道との間には、はっきりとした境界がないからです。
 尿道は尿の排出路で、その周りを筋肉が取り囲んでいて、尿を漏らさない働きをしています。尿道と筋肉の間には皮下脂肪があって、皮下脂肪の中には血管の網目が張り巡らされています。尿道カルンクラとは皮下の血管が膨らんで外に飛び出したものですが、正常部分との間にはっきりとした境界があるかといえば、実はないのです。例え顕微鏡で観察しても、どこまでが異常に膨らんだ血管で、どこからが正常の太さか、という線引きは難しいのです。
 でも、暗赤色で盛り上がっている部分を切除すれば再発することはありません。尿道カルンクラの奥行きは最大でも1㎝ぐらいしかありませんから、手術時に筋肉を傷つける心配はありません。ですから、術後に尿失禁になることはありません。
 仮に手術しないまま放置しても、尿道を塞ぐように発育することはありません。尿が出せなくなるのではないかとか、歳をとって寝たきりになったとき、尿道カテーテルが挿入できなくなるのではないか、といった心配はありません。

 回答者:木村泌尿器皮膚科(神奈川県)院長 木村 明