湿疹は防衛反応の誤作動

かゆくて赤いぶつぶつ

湿疹と皮膚炎は同じ意味で使われ、皮膚科を受診される患者さんで最も多い病気です。
皮膚のかゆみ・赤み・ぶつぶつが見られます。

湿疹は何故起こる

皮膚は、外敵の進入を阻むため、何重もの防衛機構を備えています。
これらは寄生虫や細菌が体に進入しようとしたときには非常に有効な防衛軍です。
しかし、本来体に害をなさない物質が入ってきたときにも防衛軍は作戦を開始してしまいます。

かゆみは何故起こる

かゆみを医学的に説明すると「掻きたいという衝動を引き起こす感覚」です。
皮膚の表面にみられる特有の感覚で、寄生虫などの侵入を知らせるためのものです。
寄生虫が皮膚から入ろうとしているとき、蚊が血を吸おうとしているとき、その部位を無意識に掻くと、外敵を退治できますから、生体防衛反応のひとつなわけです。
アトピー性皮膚炎では、皮膚のバリア機能が障害されているために、花粉・ホコリ・ダニの糞や死骸などが表皮の中に入り込みます。
そして神経がそれを取り除くべき外敵と判断すると、「掻きたいという衝動」を引き起こすのです。

赤みは何故起こる

体に外敵が侵入しようとしていることがわかると、その場所に兵隊を集めなければなりません。
紅斑(赤み)は戦い(炎症)を始めるために皮下の毛細血管が拡張している状態です。

ぶつぶつは何故起こる

侵入しつつある敵を迎え撃つため、リンパ球が表皮内に入っていき、表皮細胞間に浮腫みが起こります。
これが丘疹(ぶつぶつ)で、浮腫みが強くなれば水疱になります。

すべては防衛反応

侵入しかけているものが寄生虫や細菌なら、これは正しい戦争です。
しかし、銀杏に触れただけ、花粉・ホコリ・ダニの糞や死骸が浸み込んだだけで、戦争が始まり、その結果、かゆみ・赤み・丘疹が起こると迷惑です。

治療はステロイド外用、抗ヒスタミン薬内服。

その過剰な防衛反応を止めるのは、ステロイド外用と抗ヒスタミン薬内服です。
ステロイド外用は、表皮内に入ってきたリンパ球の働きを沈静化し、抗ヒスタミン薬内服はかゆみを止めます。

他にも見られる過剰防衛反応

花粉症の咳・鼻水は、ウイルスの侵入を排除する防衛反応、
嘔吐・下痢は、食べ物に毒が入っていたときに吸収しないで吐き出すためのものです。

精巧に作られた防衛反応、でも誤作動で戦争が始まったら迷惑ですよね。

一方、ステロイドは停戦命令のようなもの。敵に攻められている時には使ってはいけません。
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