が勤務医時代に作ったサイト
新聞で超音波治療(HIFU)についての記載を読み、興味を
Q.父が前立腺がんです。いま、ホルモン療法を行っています。CTの結果、転移はありません。新聞で超音波治療(HIFU)についての記載を読み、興味を持ちました。保険がきかない、日本での治療実績が少ないなどのデメリットも書いてありました。先生はどのようにお考えですか?お教えください。よろしくお願いします。
A.私は前立腺癌の超音波診断で博士になりました。それも直腸から超音波装置を入れる方法に関係してです。前立腺癌は外腺(直腸に近いところ)に出来ます。直腸内から発射した超音波のエネルギーを細胞が死ぬほどの量、外腺に集中させることができるのか、直腸粘膜は大丈夫なのか、懐疑的に結果が出るのを(どちらかというと懐疑的に)待っているところです。でもプロジェクトXでも、しろうとの発想が大事のようですから、博士になっただけで、何の賞も取っていない私の言うことを信じなくていいですよ。
2006年11月加筆
超音波治療(HIFU)での治療成績は発表され始めていますが、ホルモン療法を併用しているかどうかの記載がなかったり、PSAが3回連続上昇しなければ治ったと判定するなど、他の治療法と比較できるものは出ていません。
最近開かれた市民公開講座で、この治療を身近で見たことのある教授が「この治療は、若い人、悪性度の強い癌には向かない」、と断言していました。
2008年3月加筆
私は経直腸的超音波検査での前立腺癌の診断で博士号を頂きました。
しかし、博士号のテーマとして最初に先輩から与えられたテーマは超音波CTでした。
反射した音ではなく透過した音を元に画像を作成する研究でした。
したがって、音を狭い範囲に収束させる技術には詳しいのです。
大雑把な絵ですが、音はこういう風にしか収束させられません。狭い範囲だけにエネルギーを集中させたければ、強力超音波を出すスピーカーの半径を大きくしなければならないのです。
いくらでもスピーカーの半径を大きくしてよいのなら、例えば乳がんに直径10cmのスピーカーを当てて治療するのであれば、5mm四方の狭い範囲の細胞だけを沸騰させる事ができるかもしれません。
しかし、肛門に挿入できる装置の半径は限られます。直腸壁を焼かずに、前立腺外腺にできた癌細胞だけを焼くのは、音が進む方向の焦点が絞りきれないため、難しいと思うのです。
超音波画像を示します。HIFUはこの画像で観察しながら前立腺を順次焼いてゆくのです。
画像内に3x12mmとされている焦点を示しました。縦方向の焦点が広いので、直腸壁をさけて前立腺外腺をぎりぎりまで加熱するのは困難だろうと想像しているわけです。