アメリカ泌尿器科学会機関誌. 2003 9月号;170卷(3号):818-822ページ.

無症状対象者と比較した前立腺炎・慢性骨盤痛の患者での白血球数と細菌

Nickel JC, Alexander RB, Schaeffer AJ, Landis JR, Knauss JS, Propert KJ; 慢性前立腺炎共同研究ネットワーク.

目的 慢性前立腺炎従来、前立腺の炎症・感染症とされ、前立腺から取られた検体中の白血球・培養で生えた細菌により、分類されてきた。 我々は、前立腺炎・慢性骨盤痛の患者と、健常対象者とで、3杯分尿(初尿・中間尿・マッサージ後尿)と押し出した前立腺液(EPS)と精液における 白血球数と細菌の分布を比較した。

対象と方法 NIH(国立衛生研究所?カナダの医師のNickelがリーダーなのが不思議)慢性前立腺炎調査に組み込まれた463名と、年齢をマッチさせた排尿症状のない男性121名で、標準的な4杯テスト(初尿・中間尿・前立腺液・マッサージ後尿)で採取した検査材料と精液とで、白血球数と5日間の細菌培養を行った。患者と対照者とで結果に影響しそうな別の要素(人種・最終学歴・配偶者の有無・就労しているか・収入・包茎の有無)が片寄っていないか、Mantel-Haenszelの多重比較検定を行った。施設間で検査データに偏りが出るのを補正するため、多変量モデルをロジスティック回帰法で構築した。

結果 前立腺炎・慢性骨盤痛の患者では健常対象者に比べ、初尿・中間尿・マッサージ後尿と前立腺液中の白血球数は統計学的に多かったが、精液中の白血球数は差がなかった。 しかし、健常対象者にも白血球が陽性の人が多かった。 顕微鏡400倍視野で前立腺液を見たとき白血球数が5個以上見えるのは、患者では50%なのに対し、健常者では40%、顕微鏡400倍視野で前立腺液を見たとき白血球数が10個以上見えるのは、患者では32%なのに対し、健常者では20%であった。同様に、顕微鏡400倍視野でマッサージ後尿を見たとき白血球数が5個以上見えるのは、患者では32%なのに対し、健常者では19%、顕微鏡400倍視野でマッサージ後尿を見たとき白血球数が10個以上見えるのは、患者では14%なのに対し、健常者では11%であった。前立腺分泌液、マッサージ後尿、精液のみに尿路に病原性を有する細菌(大腸菌・クレブシエラ・緑膿菌・プロテウス・黄色ブドウ球菌・腸球菌)が見つかる(初尿と中間尿には出ないで)率は、前立腺炎・慢性骨盤痛の患者(8.0%)と無症状者(8.3%)で同じであった。

結論:前立腺炎・慢性骨盤痛の患者では健常対象者に比べ、初尿・中間尿・マッサージ後尿と前立腺液中の白血球数は多かったが、精液中の白血球数は有意差がなかった。 健常対象者に比べ、前立腺炎・慢性骨盤痛の患者で、細菌の分布の比率に差もなかった。 健常対象者でも、白血球と細菌が高率に認められたことは、 前立腺炎・慢性骨盤痛の患者における診断手段としての、標準的な4杯テストの臨床的な有用性について疑問を提起する結果であった。

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