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スライド1  国際前立腺症状スコア(IPSS)は,AUAの症状評価法を公認の手法として採用しており,その特徴は,質問7項目につき6段階の答えが用意されており,その段階の区分は,症状の程度を問うものではなく,何度に1度尿が出にくいかといった頻度を尋ねていることである.
A-1 排尿をした後,尿がまだ残っている感じ(残尿感)がありますか?
A-2 排尿をした後,2時間以内にもう一度(排尿頻度)排尿に行くことがありますか?
A-3 排尿の途中で,尿が途切れる(排尿時のとぎれ)ことがありますか?
A-4 尿意を我慢できないで,漏らした或いはトイレに急行する(尿意コントロール)ことがありますか?
A-5 排尿の勢いが弱い(尿の勢い)と感じるのは,どの位の回数でみられますか?
A-6 排尿時にいきむ事(いきみ)がありますか.又それは,どの位の回数でみられますか?
A-7 一晩に何回くらい(夜間排尿回数)排尿のために起きますか(起床時は含まない)?


スライド2  AUAが当初作成した質問表の中には,スライドに示したような程度を尋ねるものもあったが,QOLに関する質問との相関が低かったり,1つだけを選べないといった患者のクレイムで不採用になった.患者のすべての排尿を観察したうえで,頻度を尋ねる質問形式のほうが妥当だと示されたわけではない.
Question 11. How long have you most commonly had to wait at the toilet before urine starts to come out?
0-Not at all
1-A few seconds
2-About 15seconds
3-About 30seconds
4-A minute or more

Question 13. Once you get the urge to urinate, how long could you usually wait comfortably before going to the bathroom?
0-1 hour or more
1-About 30 minutes
2-About 15 minutes
3-A few minutes
4-Less than 1 minute
5-less than 10 seconds

Question 15. How would you describe the size and force of your urinary stream compared to when you were 20 years old?
0-No impairment or restriction
1-Minimal impairment or restriction (barely noticeable)
2-Mild impairment or restriction (mild but clearly noticeable)
3-Moderate impairment or restriction
4-Severe impairment or restriction



スライド3  そこで,頻度を尋ねるIPSSの質問形式が正しいかを検証するため,男性入院患者20人(うち前立腺肥大症,癌の6例については治療前後)に,IPSS評価と,終日ウロフローメトリを施行した.終日ウロフローメトリは,入院中の患者に個人用のICカードを持たせ,トイレに設置した尿流計にICカードを挿入してから排尿してもらうことにより,すべての排尿時に尿流率検査をICカードに記録する装置である.  1患者あたり平均60回の尿流率検査を記録した.排尿時刻のデータより,21時から6時までの排尿回数,2時間以内にトイレに行った回数の割合を求めた.尿流曲線から尿線中絶の割合,最大尿流量,躊躇時間の分布と平均値を求めた.

スライド4  頻尿,尿線中絶,夜間尿の主観点と客観点の合計点の分布を示す.最大6点のずれがあり,スコアが完全に一致したのは,延べ6例に過ぎず,延べ6例に3点以上のずれを認めた.


スライド5  勢いの自覚スコアと最大尿流率の平均値との関係を示す.スコアが高い症例ほど,最大尿流率の平均値は低い傾向が見られた.相関係数は-0.71であった.


スライド6  個々人が,どの程度を勢いが悪いと感じるかを最大尿流率の閾値で明らかにするために,例えば3から5回に1回尿の勢いが悪いと答えた場合には,最大尿流率の低値から4分の1のところの値を選んだものである.スコアが0と答えた場合は最大尿流率の最低値を示してあり,閾値はこれより下にある.逆に5と答えた人では,閾値はこの点より上にある.どの程度を勢いが悪いと感じるかは,かなり個人差があった.


スライド7  さらに,同一人でも,術前に毎回と答えたときの境界値と,術後に5回に1回と答えたときの境界値は必ずしも一致しなかった.6例での,治療前後の最大尿流率の分布と,個々人が勢いが悪いとした閾値を示した.治療前後の閾値を数値で示し得た3例では,全例閾値が治療後低下していた.これは,スコアが治療後低下するのはプラセボ効果もかなりあることをうかがわせた.


スライド8  いきみのスコアと躊躇時間の平均値との関係を示す.まったく相関はなかった.我々は,WHOの委員会の翻訳ではなく,AUA症状スコアを独自に訳して用いていたが,「排尿時に息む必要がありますか」は,遷延性排尿の質問とは理解されていないようであった.


スライド9  質問項目間と客観値間の相関係数を示す.Sが自覚症状,Oが客観データである.S尿線中絶とO尿線中絶との相関は高く,尿がとぎれるのは何回に1回起こるかは正確に答えられていた.S勢い,S残尿も,O尿線中絶と相関を認め,S尿線中絶と同系統の質問であった.S残尿とS尿線中絶の相関係数は,AUAに比べても異様に高く,残尿とは一度止まった後にまた出てくる尿と誤解されているのではないかとさえ思われた.S頻尿とO頻尿との相関は低く,2時間以内にトイレに行く回数は正確に答えられない質問のようであった.しかも,O頻尿は他の何れの客観値とも相関を示さないのに,S頻尿が他の質問項目のほとんどと相関を示しており,

スライド10