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日泌総会93回


神経温存会陰式前立腺全摘術10年の治療成績

  横浜新緑総合病院泌尿器科 吉田 雅彦
明理会大和病院泌尿器科 谷口 淳、矢崎 恒忠
  板橋中央総合病院泌尿器科 飯山 徹郎、本間 次郎
  東京共済病院泌尿器科 木村 明
  東大成クリニック 星野 嘉伸

術後の回復が早く低浸襲な術式である会陰式前立腺全摘術(RPP)は、近年米国では治療効果・対費用効果の点でも高い評価をされているが、日本では施行している施設は少ない。我々は以前よりRPPを施行してきたが、神経温存・膀胱尿道吻合の正確さも尿禁制などの温存に重要であると考え、1992年より神経温存RPPを施行しているので報告する。
【方法】対象は局所前立腺癌と診断された27例。術式は、神経血管束とSantorini静脈叢をほぼ完全に温存し、膀胱尿道吻合は直視下で最低5針をmattress縫合した。手術時間は中央値2h20m、出血量は416ml。術前PSA値は10ng/ml以上7例だった。
【成績】術後病理は中分化癌17例、低分化癌4例、pT3以上6例、ew+7例、sv+3例だった。同種血輸血、吻合部狭窄、創部離開はすべてなく、morning stiffnessありは67%(12/18)で、6ヶ月以内の尿失禁消失率も81%だったが、1年後も続く症例が3例あった。PSA非再発率は5年63.5%、10年56.5%、生存率は10年91.7%で、癌死は1例であった。 ラーニングカーブはあるが、低浸襲性のみならず、尿禁制・性機能などの合併症も恥骨後式より同等以上に少ない傾向が認められ、stage migrationの起こっている日本でももっと見直されても良い術式だと考えられる。今後も根治性を注意深く観察するべきだとも考えている。