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日泌総会85回



疑似積層法による前立腺超音波計測

東京共済1),東京大分院2),東京大3)
木村明1),北村唯一2),黒岡雄二3),河邉香月3)

(目的)前立腺超音波検査は最近,バイプレーン探触子を用いて行われることが多くなったが,横断像と縦断像から楕円体で近似する前立腺体積計測法は探触子の傾け方で変化し,連続横断像から求める積層法に比べ再現性が悪い.我々は,ハンドスキャナ用の体積計測法として,横断像と縦断像の輪郭をトレースして求める疑似積層法を提案する.(計算式)この方法は,横断像を縦断像内に当てはまる様に縮小コピーしたものを5mm間隔で配列した模型の体積で近似する.最大横断像の面積をSm,縦断像内で5mm間隔で計測した上下径をDi,その内の最大値をDmとすると,横断像をDi/Dmに縮小したものを5mm間隔で配列した模型の体積は,0.5 x Sm x Σ(Di/Dm)2 で求まる.(症例での検証)正常例50例,肥大症50例,癌50例での積層法に比べた誤差は,疑似積層法では楕円体法より小さかった.しかも,楕円体法が肥大症を特に過小評価するのに対し,疑似積層法は前立腺の形状による偏りがなかった.正常例5例,肥大症5例,癌5例の3Dモデルを元々の走査面に対しー45度から+45度まで傾けた架空の平面で切断したときの変動の程度も,疑似積層法の方が楕円体法より小さかった.疑似積層法を分母としたPSADと楕円体法を分母としたPSADを,EIA法によりPSAを測定した34例(癌10例,非癌24例)で比較すると,前者の方が偽陽性率が低かった.(結論)疑似積層法は,誤差が小さく,探触子の角度に影響されない.肥大症の体積のみを過小評価するといった疾患による誤差の程度の差がないので,PSADの分母にも適している.数式は簡単で,面積計測の機能のある観測装置に簡単に組み込めるものである.