link to PSA top page

日本超音波医学会第75回学術集会(高松)



経直腸的超音波ガイド下前立腺針生検の偽陰性率

東京共済
木村明




目的:経直腸的超音波ガイド下に前立腺針生検が行われるようになって、導入前に比べ、偽陰性の率や質に変化が生じたかを、retrospectiveに検討する。
対象:人間ドックからPSA高値で当科に紹介され、1996年7月から1999年6月までに前立腺針生検を行った症例114例を対象とした。当科には1997年8月に経直腸的超音波断層装置(アロカSSD-1200)が導入されたため、それ以前の44例が触診下に前立腺針生検を行った群(以下DRE群)、それ以後の70例が超音波ガイド下に前立腺針生検を行った群(以下TRUS群)である。当院での診療録と人間ドックでのその後の健診記録を基に、2001年12月時点での転帰を調査し、初回針生検が陰性だった症例のうち、その後の再生検で癌が発見された症例を偽陰性症例として扱い、偽陰性の率をDRE群とTRUS群で比較した。また、それら偽陰性症例の再生検時の癌の広がり(6本中何本に癌を認めたか)についても検討した。
結果:DRE群44例中、初回針生検が陽性だったものが12例(27%)、陰性だったものが32例(73%)であった。初回針生検が陰性だった32例中3例が2回目以降の針生検で癌と判明し、偽陰性率は9%であった。TRUS群70例中、初回針生検が陽性だったものが10例(14%)、陰性だったものが60例(86%)であった。初回針生検が陰性だった60例中5例が2回目以降の針生検で癌と判明し、偽陰性率は8%であった。DRE群の偽陰性例3例の再生検でのstageはすべてB1であり、6本中1本に癌を認めた例が2例、6本中3本に癌を認めた例が1例であった。TRUS群の偽陰性例5例の再生検でのstageもすべてB1であり、6本中1本に癌を認めた例が1例、6本中2本に癌を認めた例が2例、6本中3本に癌を認めた例が2例であった。
考察:経直腸的超音波ガイド下前立腺針生検の利点としては、前立腺内から均等に組織をサンプリングできるために偽陰性が少ないであろうことと、膀胱や尿道を穿刺することによる合併症が少ないであろうことが予想される。経直腸的超音波ガイド下前立腺針生検の安全性については、すでに報告した。今回、経直腸的超音波ガイド下前立腺針生検のほうが、触診下針生検より見落としが少ないかを検討する目的で、初回針生検から3年以上が経過した症例を集計したが期待した結果は得られなかった。
図にDRE群とTRUS群のPSAの分布を示す。経直腸的超音波ガイド下に安全に前立腺針生検が行えるようになって、PSA値がそれほど高くない症例にも前立腺針生検が行われるようになったことが示されている。TRUS群のほうがDRE群よりPSAが低い症例が多いのにもかかわらず、偽陰性率が低めであることは、TRUS群に有利な結果と見ることもできる。