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疑似積層法のPSADの分母としての有効性
ーgray zone症例での検討

木村明(東京共済泌尿器科)
平沢潔,黒岡雄二,河邉香月(東大泌尿器科)

(はじめに)我々は、前立腺体積の計測法として、最大横断像を縮小コピーしたものを5mm間隔に配列する、疑似積層法を提案し1)、さらに、PSADの分母としての有効性についても以前報告した。今回、PSADが実際の臨床で役割を期待される、gray zone症例での有用性を検討した。
((対象と方法)対象は,RIA法によるPSA値が4から10で、前立腺生検を受けた26例(癌13例,非癌13例)である。経直腸超音波断層法は、テクナール社プロスキャンで行った。最大横断面積(Sm)は観測装置の計測機能により求め、縦断像での5mm間隔の上下径(Di)は目盛りの記入された透明シートを重ねて読みとった。それらをパソコンに入力し、表計算ソフトで
V = 0.5 x Sm x Σ(Di/Dm)2
を算出した。3軸を掛け合わせる直方体法での体積と比較した。

((結果)癌13例での前立腺体積の平均値は、疑似積層法で29.4、直方体法で29.1であった。肥大症13例での前立腺体積の平均値は、疑似積層法で50.4、直方体法で46.3であった。Fig.1に、疑似積層法を分母としたPSAD、直方体法を分母としたPSADの癌と非癌での分布を示す。cut off値を0.15とすると、疑似積層法でのsensitivityとspecificityはそれぞれ77%,77%、直方体法では77%,69%となった。cut off値を0.12とした場合には、それぞれ92%,62%と、92%,38%となった。いずれにおいても、疑似積層法を分母としたPSADの方が直方体法を分母としたPSADよりspecificityが勝っていた。
((考察)gray zone症例での検討では、PSADはPSA値そのものと比べて有用でない、PSAの遊離型と結合型の比の方が有用であるなど、PSADの役割を否定するものもあるが、それらの報告は直方体法により求めた前立腺体積を使用している。今回、gray zoneでも疑似積層法が直方体法に比べ優れていることが示された。疑似積層法は肥大症の前立腺体積を過小評価しないので、肥大症でのPSADのfalse positiveが少ない。
(文献)1)木村明ほか:超音波医学23,Supple 1:323,1996
Fig.1 Distribution of PSA density by pseudo-planimetry (left), that by prolate ellipse (right) in cancer patients, and in non-cancer patients.

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