泌尿器科医・木村明の日記

腎尿管結石・前立腺癌・肥大症の診断が得意な超音波医学会専門医。

MRIが前立腺生検を減らせるか?


ハード(MRI装置の改良)もソフト(診断医の経験)も進歩しており、multiparametric MRIでの正診率はROC曲線の左上隅に近づいていますが、偽陰性は0ではありません。

ROC曲線

MRIの拡散強調画像で見つかる癌は悪性度の高い癌、拡散強調画像で写らない癌はおとなしい癌です。

あなたは癌ですが治療は当面不要です、と言われるのはうれしいような、困るような感じ。

治療不要な癌なら、見つけない方が、患者の精神衛生上良いと言えます。

グリーソンスコア6のおとなしいガンの90%は拡散強調では写らない、というのは好ましいことです。

グリーソンスコア7以上の悪性度の高い癌がすべて拡散強調画像で写るか、というと残念ながら偽陰性が15%あります。

なので、拡散強調、T2強調、造影MRIを組み合わせて正診率を上げようという、multiparametric MRIが最近のトレンドです。

3つのどれかが陽性なら癌を疑うことにすれば、偽陰性は減らせます。

しかし、疑陽性は増えます。

3つすべてが陽性の時に癌を疑うことにすれば、疑陽性は減らせますが、今度は偽陰性が増えます。

疑陽性・偽陰性は診断基準で変わりますので、正診率を評価するツールがROC曲線

診断基準を連続的に変化させたときの疑陽性・偽陰性をプロットしたものです。

カーブが左上隅にくっつけば、正診率100%。

癌といえば100%癌、癌でないといえば100%癌でない。

左下隅と右上隅を結ぶ直線に近ければ、サイコロで占うのと同じ。

当たるも八卦当たらぬも八卦。

ハード(MRI装置の改良)もソフト(診断医の経験)も進歩しており、 multiparametric MRIでの正診率は、かなり、左上隅に近づいていますが、偽陰性は0ではありません。

タチの悪いガンはおそらくないでしょう。

見落としの可能性も少しはあるので、100%保証できませんが。

という説明をしなければならない段階です。

2016年6月14日